5月の終わりに、いつもの机に座って今月の Claude Lab を読み返しています。今月は「派手な新機能の発表に追いつく月」というよりも、自分のアプリ事業と、その横で動いている自動投稿パイプラインを、もう一段静かに整える月でした。アーティスト・クリエイターの廣川政樹です。今月もお読みいただきありがとうございます。
2014年に個人でアプリ事業を始めてから 12 年目、累計 5,000 万ダウンロードを超えたあたりから「派手な機能を足す」よりも「長く動き続けるための地味な手当て」を選ぶ場面が増えました。Claude を相棒にしてから、その地味な手当ての速度が目に見えて上がっています。今月の振り返りも、その実感に沿った構成にしました。
今月のテーマは「壁紙アプリ4本を、もう一度きれいに整える」
5月の前半から中盤にかけて、iOS の壁紙アプリ 4 本(Beautiful HD Wallpapers、Ukiyo-e Wallpapers、Law of Attraction Everyday、Relaxing Healing)の StoreKit 2 移行・Firebase Apple SDK の SPM 移行・AdMob メディエーションの再設計を並行で進めていました。「並行で」と書くと格好いいのですが、実際は 一人で 4 タイトル分の dSYM とリリースノートと申請まわりの書類を抱えていた だけです。
このときに Claude Code で iOS 壁紙アプリ 4 タイトルの StoreKit 2 移行を並行で回した 5 月の実測ノート を書きました。SKPayment の世代から Transaction.currentEntitlements の async sequence へ書き換えるとき、4 本同時に動かすほど 「同じ間違いを 4 回しない」 ための仕組みが必要になります。Claude Code に共通の差分パッチを作ってもらい、各アプリ固有の例外だけ手で直す、という分担に落ち着いた経緯をそのまま記録しました。
Android 側でも、Glide 5.0.5 を入れた途端に Android 6.0.1 端末で NoClassDefFoundError: java.util.function.Supplier が出るという、12 年やっていても初めて踏む類の地雷を踏みました。これは Claude Code で Glide 5.0.5 の Java 8 API クラッシュを1行で消した話 に書きましたが、最終的には coreLibraryDesugaringEnabled true の 1 行で消えました。Claude Code は Crashlytics のスタックトレースから AGP 9.x のリリースノートまで往復してくれて、こちらが疲れている朝に「再現条件はこれです、修正候補はこれです」と並べてくれる役割を引き受けてくれました。
クラッシュ調査そのものは、もう少し長期の連載になりました。累計 5,000 万 DL アプリの Crashlytics を Claude Code で 11 日間掘り続けた実装ログ は、RecyclerView の IndexOutOfBoundsException を 11 日間にわたり腰を据えて追った記録です。「派手な再設計ではなく、防御的コピーを数行入れて、それを毎朝確認する」という地味な改善が、結局いちばん早かったという所感が中心になりました。
AdMob 周りは「朝の 10 分で全体を見る」運用へ
収益化まわりでは、5 月は AdMob メディエーションを 4 本のアプリすべてに対して再編成しました。AdMob メディエーション 3 社追加を Claude と進めた実録 — 4 アプリ同時対応で分かった W-8BEN と eCPM の落とし穴 は、Liftoff・InMobi・Unity Ads を追加した際の手順を、申請書類の提出順序まで含めて書いた記事です。4 本同時に進めると、メディエーションパートナー側の支払いプロファイル設定が一番のボトルネックになります。Claude には英文の W-8BEN 解説と社内ノート用の日本語要約を交互に出してもらい、結果として 1 日で完了させられました。
運用が安定してきてからは、Claude in Chrome に AdMob の管理画面を朝だけ巡回してもらう試みを始めました。AdMob のフィルレート低下を朝に察知する運用に切り替えて 2 週間 — Claude in Chrome 所感 は、フィルレートが急に落ちた朝に「これは構造的な問題か、単発のノイズか」を 10 分以内に判定する運用に切り替えた話です。同じ流れで Android Vitals の週次レビューを Claude in Chrome に任せて 3 週間 と AppLovin MAX の A/B テスト結果を Claude in Chrome で週次レビューする運用を 1 ヶ月続けた所感 も並行で動き始めて、コンソールを開かない日でも数字が落ちている朝には気づける状態に近づきました。
「Claude Code で App Store Connect と AdMob の売上を毎朝集計するパイプライン」を組んだ この記事 は、4 本のアプリ × 7 ヶ国 × 複数広告ソースを横並びで見るための、いちばん地味な土台です。ピーク AdMob 月収を維持するためには、派手なキャンペーンよりも 毎朝同じ視点で数字を眺める習慣 のほうが効くのだと、ここ 1 ヶ月で改めて感じました。
Claude Code の運用設計を、もう一段深めた月
開発インフラ側でも、今月は「動くようになった機能を、長く動かすための設計」を多めに書きました。
Claude Code と GitHub Actions で 4 サイトの自動投稿パイプラインを 7 ヶ月運用して見えてきた品質ゲート設計 は、Claude Lab・Gemini Lab・Antigravity Lab・Rork Lab の 4 サイトを並行で運用する中で、何が落とし穴で、どこで失敗を吸収するかを article_gate.py という Python 製の品質ゲートに集約していった記録です。生成段階で防ぐべき違反(テンプレ導入文・字数不足・パーソナライズ不足)と、push 直前で弾くべき違反(壊れた内部リンク・日英不一致)の 役割分担 が、7 ヶ月かけて少しずつ言語化できてきました。
似た文脈で、Cloudflare Workers の 62 MiB 上限を踏んだ朝に、5,000 記事規模で組み直した Content Split アーキテクチャ もよく読まれました。articles.json に HTML を抱え込ませる設計は、3,000 記事までは平和でも、5,000 記事を超えたあたりで一気に壊れます。HTML を public/content/ に切り出して ASSETS バインディング経由で取りに行く構成に書き換えた朝の話を、Claude Code との対話ログを残しながら書きました。「動くものを大きくする」と「壊れずに大きくする」は別物だ、と頭を打って学ぶ機会でした。
Skill・Subagent・Rules まわりも、運用 4 ヶ月目を迎えて整理が進みました。Claude Code の Skill・Subagents・Rules を組み合わせて、社内プロジェクトを 1 時間以内に動かす:個人運用に落とし込んだ実装パターン と Subagent 間で状態を渡す3つの設計パターン — 4ヶ月のブログ自動生成で見えた使い分け は、机上の設計論ではなく 自分の本番運用で何が痛かったか をベースに書いた 2 本です。読み返すと、半年前の自分には絶対書けなかった粒度になっていて、これは Claude Code を毎日の作業に組み込んでいないと出てこない記述だな、と少し驚きました。
API・SDK のカテゴリでは Claude API トークンコストの月末予測ガイド が、個人開発で API を使うときの「いきなり請求が跳ねないように見張る」運用そのものをまとめた記事です。コストは派手ではないけれど、個人開発を 10 年単位で続けるなら、毎月静かに視界に入れておくべき数字だと思っています。
業界ニュースは Anthropic IPO の話題が中心に
ニュース側では、Anthropic IPO 2026年5月 最新情報 — 開発者・個人投資家が今知るべきこと を月の初めに公開しました。プラットフォームを使う側にとって IPO は遠い話に見えますが、API 価格のロードマップや、無料枠のあり方、企業向け契約の条件は、個人開発者の収益構造にも遅れて影響してきます。今のうちに「どこまで Anthropic に依存し、どこは自前で持つか」を考え始めるタイミングだと感じています。
並走するモデル側の動きとしては、Claude on Xcode・Claude in Chrome・Cowork の Computer Use がそれぞれ独立に成熟していった月でもありました。Claude on Xcode で Firebase SDK の更新作業を半自動化する のように、IDE 内に Claude が常駐する設計が、個人開発 6 本規模でも普通に役に立つ段階まで来ています。
個人的に手応えがあった、地味だけれど効いた工夫
月をまたいで効いていた地味な工夫を、最後に 3 つだけ。
1 つ目は、Crashlytics と AdMob の朝の巡回を Claude in Chrome に固定で任せたこと。「気が向いたら見る」運用から「毎朝必ず通る」運用に変わっただけで、フィルレート低下や新規クラッシュへの気づきが平均で 6〜10 時間早くなりました。
2 つ目は、4 サイト × 1 日 4 本のパイプラインに、Python 製の品質ゲートを差し込んだこと。Claude が生成する記事は「悪くはないけれど薄い」ことがあり、字数だけで判定すると水増しを誘発します。コード・メトリクス・構造化手順・実装インサイトなどの 実用性シグナル を 3 つ以上含むことを通過条件にしたら、自分が読み返しても気持ちのいい記事だけが残るようになりました。
3 つ目は、「動くまでやる」と「長く動くようにする」を、別の日にやること。Claude Code でその日のうちに動かしてしまうと、嬉しさのあまり長期保守を後回しにしがちです。月単位で振り返ると、後者を別日に Claude と一緒に整えた回ほど、後で自分を助けてくれていました。
6月に持ち越したい問い
来月に向けて、いくつか問いを抱えています。
ひとつは、Claude on Xcode と Claude in Chrome をどこまで重ねるか。両方を毎日使っていると、責務の境界が少しずつ滲んできました。次の 1 ヶ月で、自分の中の使い分けを言語化したいと思っています。
もうひとつは、4 サイトのプレミアム記事をどう育てるか。5 月は月間 48 本のプレミアム記事を公開しましたが、ここから「読み続けてもらえる記事」と「単発で消費される記事」の差を、もう少し丁寧に見ていきたいと考えています。
最後に、個人開発 13 年目に入る前に、Claude を使った運用そのもののドキュメント化を進めたいと感じています。「自分が今日いなくても、明日も同じ品質で記事が出続ける」状態を、まずは手元のフォルダ単位で作っていきます。
5月にお読みいただいたみなさま、ありがとうございました。来月もこの机から、地味な記録を続けます。同じように一人で長くものづくりを続けている方にとって、何か参考になる断片があれば嬉しいです。