メディエーションパートナーを追加したあとに待っていたのは、もっと地味な作業でした。フロアプライスの細かい上下調整です。Unity Ads・Liftoff・InMobi の 3 社を組み込んだ直後は eCPM が安定せず、各国・各ネットワークごとに値を少しずつ動かしていく日々が始まりました。
私は 2014 年から個人でアプリを作っていて、累計 5,000 万ダウンロードを超えるくらいに育った今でも、こうした地味なチューニングを面白がる時間が一番落ち着くと感じています。今回は 3 週間にわたって Claude in Chrome に伴走してもらいながら、4 アプリ分のフロアプライスを毎日見直した所感を残しておきます。
始める前の状態
対象は Beautiful HD Wallpapers、浮世絵壁紙アプリ、Relaxing Healing、Law of Attraction Everyday の 4 本です。直前に AppLovin MAX のウォーターフォールへ Unity Ads・Liftoff・InMobi を追加したばかりで、各アプリ × 主要 5 ヶ国 × 3 ネットワーク = 60 行のフロアプライスを抱えた状態でした。
最初の 2 日は eCPM が大きく揺れました。Liftoff だけが極端に高い floor で落札を取り損ねている、InMobi はインドネシアと日本でだけ強い、Unity Ads はリワードビデオ枠で安定している——表に書き起こしてみると、ネットワークごとの個性がはっきり出ていて、これを 60 行全部、感覚だけで毎日触るのは無理だと早々に観念しました。
Claude in Chrome に頼んだ作業の輪郭
私は Claude in Chrome を、ダッシュボードの「目」として使っています。自分でクリックして数値を読み取る代わりに、Chrome 上の AppLovin MAX ダッシュボードと AdMob のレポート画面を順に巡回してもらい、必要な数値だけテキストで返してもらう運用です。
毎朝の手順はおおむね次のような形に落ち着きました。
- AppLovin MAX のウォーターフォールごとに、過去 24 時間の eCPM・fill rate・request 数を抽出
- AdMob のレポートで、同じ期間のアプリ × 国別 eCPM を取得
- 前日比で eCPM が 15% 以上下がっているネットワーク行をハイライト
- fill rate が 80% を切っているネットワーク行をハイライト
- その結果を 1 つのテキスト表にまとめて私に渡す
ここまでが Claude in Chrome の担当で、最終的に floor を上下させる判断は私がしました。「ここは下げる」「ここは触らない」をテキスト指示で返すと、続けてダッシュボード側の入力までやってくれます。判断と作業を分けたのが、3 週間続けられた一番の理由かもしれません。
3 週間で見えた 3 つの傾向
1. 国別の最適な floor は週単位で動く
最初は「Brazil の floor は $0.4 でいい」と感覚で固定していたのですが、実際に毎日数値を眺めてみると、週末と平日で取れる単価がはっきり違いました。木曜から日曜にかけて Brazil の Liftoff だけが eCPM を伸ばし、月火に落ち込む。floor を週ごとに動かすだけで、月末の合算 eCPM が 8% ほど上振れしました。
毎日触るのは大変なので、Claude in Chrome に「過去 7 日の eCPM 平均と前 7 日の平均を比較し、差が 10% 以上ある行だけ報告する」という巡回を組み込みました。差分だけが届くので、見るべき行は毎朝 5 〜 10 行に絞られます。
2. fill rate を見ないと floor の上げすぎに気付けない
eCPM が高いと気分はいいのですが、fill rate が落ちると配信本数が減るため、結果的に収益総額は下がります。これは頭では分かっていても、ダッシュボードを目視していると eCPM の数字に気を取られがちでした。
Claude in Chrome に「fill rate が 75% を切ったら必ず警告して」と書いておくと、その行は floor を 1 段下げる候補としてリストに上がってきます。3 週間で 5 回、知らないうちに floor を上げすぎていた行を救いました。
3. インドネシアと日本の InMobi がコスト効率で頭ひとつ抜けた
これは想定していなかった発見でした。インドネシアと日本で InMobi のリクエスト単価が低めで、その分 floor を下げても採算が合いやすい。一方で米国とブラジルでは Liftoff が強く、InMobi はほぼ落札に絡んできません。
この傾向は AppLovin MAX のデフォルトの並び順だけ眺めていても気付けなかったと思います。Claude in Chrome に「国別 × ネットワーク別の eCPM を縦横転置して並べて」と頼んで、初めて視野に入った発見でした。アート作品の構図を考えるときに、いったん横に寝かせて見直すと違うバランスに気付くのと似た感覚だと感じます。
自分で触り続けた部分
Claude in Chrome に任せきりにしなかった部分も書き残しておきます。
- 新しい floor 値の最終決定は毎回手動で行いました。提案された値をそのまま入力する運用も試しましたが、想定外の動きをした日があり、結局自分の目で見て決める形に戻しました
- 新規のメディエーションパートナー追加・W-8BEN まわりの書類提出は、依然として自分でブラウザを直接触っています。書類関係は履歴を残しておきたいので、自動化の対象から外しています
- 月末の収益サマリーは、Claude にレポートをまとめてもらう運用です。ダッシュボード巡回と判断は別物として運用するほうが、ミスが減ると感じています
数値の振り返り
3 週間運用してみての結果は、4 アプリ合算で eCPM が 12% 程度の上振れ、リクエスト数当たりの収益が 9% 増となりました。劇的な改善というよりは、毎日少しずつ積み上げた結果がこの数字に落ちた、という印象です。
副次的な効果として、ダッシュボード巡回にかかっていた時間が 1 日あたり 40 分ほど短くなりました。短い時間ですが、これが 4 アプリ × 30 日続けば 20 時間相当になります。その 20 時間を作品制作の方に回せるようになったのが、私にとっては一番大きな変化でした。
これから取り組もうとしていること
次の 3 週間で試したいのは、Claude in Chrome にウィークリーで「floor 候補値の差分」を提案させ、それを Slack か note 草稿に下書きしておく運用です。毎朝の確認はそのままに、週単位の戦略は別のリズムで意思決定したい、というのが直近の興味です。
少し離れた話になりますが、両家の祖父はどちらも宮大工で、丁寧に組み上げたものは何十年も残るという感覚を、子どもの頃に間近で見ていました。フロアプライスの調整も、毎日ほんの少しずつ整え直していく性質の作業です。アプリも長く残るものとして育てたいので、こういう地味な作業との付き合い方を、これからも丁寧に育てていきたいと感じています。
同じ構成で AdMob を運用されている方の参考になれば幸いです。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。