アプリのストア説明文を、ひとつの会話のなかで何日も磨き続けていたことがありました。最初のうちは順調で、Claude もこちらの言い回しの癖をよく拾ってくれていたのです。
ところが数日目あたりから、返信が目に見えて遅くなり、使用量の残りも思ったより早く減っていきます。「新しい会話に移れば軽くなる」とは分かっていても、ここまで積み上げた経緯を手放すのが怖く、しばらく同じ会話を引きずってしまいました。
最初にお伝えしたいのは、会話を移すこと自体は難しくなく、難しいのは「何を持っていくか」を決めることだという点です。ここからは、私自身が何度か失敗してたどり着いた「3項目だけ持っていく」引き継ぎ方を書き残します。
「重い」には二つの意味があります
引き継ぎを考える前に、症状を切り分けておきます。Claude のヘルプセンターでは、制限が二種類に分けて説明されています。
| 種類 | 何を決めるか | 出やすい症状 |
|---|---|---|
| 使用量の制限 | 一定の期間にどれだけ使えるか(5時間ごとのセッション上限と、週ごとの上限) | 「上限に達しました」と表示され、リセットまで待つことになる |
| 長さの制限 | ひとつの会話がどこまで長くなれるか(コンテキストウィンドウ) | 会話が長くなりすぎて、続けられない・古い内容が扱いにくくなる |
見分け方は単純です。どの会話を開いても止まるなら使用量の問題、特定の会話だけが重いなら長さの問題です。今回の対象は後者で、そこに前者が絡んできます。
公式の説明では、会話が長くなるほど使用量も多く消費されます。さらに、コード実行を有効にしている場合は、上限が近づくと Claude が古いやりとりを自動で要約して続けてくれます。便利な仕組みですが、そのぶん長い会話は使用量を食うため、「上限が近いなら新しい会話に移ったほうがよい」とも案内されています。
つまり、重いと感じた時点で会話を移すのは、気休めではなく公式にも沿った判断なのです。
最初に試した方法と、うまくいかなかった理由
私が最初にやったのは、会話の最後に「ここまでを全部要約して」と頼み、出てきた文章をそのまま新しい会話に貼る方法でした。
結果は芳しくありませんでした。要約は丁寧で、しかも長いのです。新しい会話の冒頭でその要約を読み込ませると、今度はそれが会話の大半を占めてしまい、肝心の「次に何をするか」が埋もれました。
もうひとつの失敗は、要約に「却下した案」が入っていなかったことです。新しい会話の Claude は、すでに試して捨てた言い回しを、また自信ありげに提案してきました。同じやりとりを、もう一度最初からやり直すことになったのです。
ここから引いた線引きは、一文にまとまります。
要約は「何があったか」ではなく、「次の会話が同じ場所でつまずかないために何が要るか」で選ぶ。
残した3項目
結局、引き継ぎメモに残すのは次の3つだけにしました。
1. 決定事項(もう動かさないこと)
トーン、対象読者、文字数の上限、使う用語と使わない用語。会話の途中で固まったものを、箇条書きで短く書きます。経緯は要りません。結論だけで十分です。
2. 却下した案とその理由
先ほどの失敗から、これが最も効果的だと感じています。「この言い回しは硬すぎたので不採用」のように、一行ずつ書いておきます。理由が添えてあると、Claude は似た案も避けてくれます。
3. 次の一手(最初に頼むこと)
新しい会話で最初に何をしてほしいかを、一つだけ書きます。ここが曖昧だと、Claude は引き継ぎメモの感想から話し始めてしまいます。
実際に使っているメモの型
古い会話の最後に、次のように頼んでいます。
この会話を新しいチャットに引き継ぎます。
次の3項目だけを、合計400字以内でまとめてください。
経緯の説明や、うまくいった部分の振り返りは不要です。
1. 決定事項(今後変えないこと)
2. 却下した案と、却下した理由(一行ずつ)
3. 次の一手(新しい会話の最初に依頼すること。一つだけ)何を解決するかといえば、「要約が長くなりすぎて、新しい会話の冒頭を占領する」問題です。文字数を先に縛っているのは、縛らないと Claude が親切心から詳しく書いてしまうためで、短くすること自体が引き継ぎの質を上げるのだと気づきました。
出てきたメモは、そのまま新しい会話の最初のメッセージに貼ります。必要なら、貼る前に自分の目で一度読み、決定事項に間違いがないか確かめてください。
残さなかったもの
3項目に絞るために、意図的に手放したものもあります。
- 会話の流れそのもの:誰がどの順で何を言ったかは、新しい会話では役に立ちません。
- 途中の草案:採用されたものだけが「決定事項」に入ります。草案が必要なら、ファイルとして別に保存しておきます。
- Claude の長い解説:必要なら、また聞き直せば済みます。
迷ったときは、「これが無くて次の会話が同じ失敗を繰り返すか」と自問します。繰り返すなら残し、繰り返さないなら捨てるのです。
長い会話をそもそも作らない工夫
引き継ぎが上手になっても、長い会話を何度も作るのは手間です。ヘルプセンターに書かれている対策のうち、私が実際に効いたと感じたのは次の二つでした。
ひとつは、繰り返し使う前提資料をプロジェクトに置くことです。プロジェクトは必要な部分だけを読み込む仕組みなので、毎回同じ資料を貼り直すより会話が軽くなります。プロジェクトの使い方はClaude Projects 実践ガイドにまとめてあります。
もうひとつは、使っていない拡張思考やコネクタを切ることです。ツールやコネクタは多くのトークンを使うと公式にも書かれています。調べものが要らない会話では、最初から切っておくだけで差が出ます。
使用量の側から日々の使い方を組み立てたい方は、5時間セッションを前提にした一日の組み立て方もご覧ください。また、会話の途中で指示が抜け落ちるように感じる場合は、忘れる原因の切り分けが近い内容です。
まとめ:次に重いと感じたら
長い会話が重くなったら、私はまず症状を切り分け、特定の会話だけが重いなら移ることにしています。そして古い会話の最後に、先ほどの3項目を400字以内で出してもらい、新しい会話の最初のメッセージに貼ります。
次にやることは、一つだけです。今、重くなっている会話をひとつ開き、「決定事項・却下した案・次の一手」の3行を書き出してみてください。書けたなら、それが引き継ぎメモの完成形です。
書き出してみると、手放しても困らないものが意外に多いことに気づくかもしれません。