4つのサイトを個人で運営し始めて最初に困ったのは、どのサイトの文章も「同じ顔」になってしまうことでした。
Claude に記事を書いてもらうと、導入部が判で押したように「最近〇〇を耳にする機会が増えています」で始まる。まとめが必ず「以上、〜についてご紹介しました」で終わる。読む側としても、書かせる側としても、これはまずいと思いました。
問題はプロンプトにありました。「丁寧に書いてください」「わかりやすく」——こう指示していたのですが、これは「文体の条件」ではなく「文章の目標」です。Claude はその目標を達成しようとして、学習データの中で最も「丁寧でわかりやすい」と評価されたパターン、つまり誰でも書けそうなAI的な文体を選んでしまいます。
以下に、システムプロンプトに「書き手の声」を実際に組み込んだ経験を整理しておきます。個人で運営している4つのサイトで試したパターンですので、小規模・個人運営のケースに近い方には特に参考になるかもしれません。
なぜ「丁寧に」だけでは伝わらないのか
Claude に文体を伝えるとき、形容詞だけで指示するのは「赤い車を描いてください」と伝えながら具体的なイメージは共有していないのと似た状態です。
「温かく」「親しみやすく」「自然な感じで」——これらは読者が受け取る印象の話であって、書き手が選ぶ語彙・文の長さ・語尾パターン・視点の置き方の話ではありません。Claude は指示された印象を目指そうとしますが、その実現方法は自分で選んでしまいます。
私が4サイト運営の初期に気づいたのは、「文体の指示は4つの要素に分解して伝える必要がある」ということです。
- 語尾パターン:「〜です」「〜します」「〜かもしれません」「〜ではないでしょうか」のどれをどの割合で使うか
- 文の長さと区切り方:1文を何文字以内に収めるか、接続詞で繋げるか、改行で区切るか
- 視点と距離感:「私は〜と思います」(一人称・主張型) vs 「〜と言われています」(客観型) vs 「〜だと感じています」(一人称・省察型)
- 感情の出し方:断言するか、余白を残すか、読者と一緒に考えるスタンスを取るか
実際のシステムプロンプトの Before/After
私が最初に使っていたシステムプロンプトの文体指示部分はこうでした:
文体は丁寧で親しみやすく、読者に寄り添う形で書いてください。
この指示で生成された文章の導入(Before):
AIの活用が急速に広がる中、適切なシステムプロンプトの設計はますます重要になっています。ここでは効果的なシステムプロンプトの書き方について、わかりやすく解説していきます。
読んでいただけると分かるように、誰でも書けそうで、誰が書いたかが全く見えない文章です。
これを次のような指示に書き換えました(After):
【文体の指針】
語尾: 敬体(です/ます調)で統一する。「〜かもしれません」「〜ではないでしょうか」「〜だと感じています」を積極的に使い、断定を避ける。
文の長さ: 1文は40〜60字以内を目安にする。長い説明が必要な場合は接続詞(「ただ」「一方で」「それでも」)で繋ぐより、別の文に分けてリズムを作る。
視点: 「私は〜と思います」「私自身〜を経験しました」のように、一人称で個人の判断や体験に基づいて書く。「〜と言われています」という匿名の権威には頼らない。
導入の書き方: 「ここでは〜を整理します」という予告文は書かない。具体的な状況・問題・発見から書き始める。例:「4つのサイトを運営し始めて最初に困ったのは〜」
Few-shot例文(このトーンで書く):
例A: 「試してみると、公式ドキュメントとは少し違う挙動をすることがあります。これはバグではなく、APIのバージョン間の違いによるものです。初めてこれにぶつかったとき、原因を特定するのに半日かかりました。」
例B: 「個人開発では、完璧な設計より『動くものを早く届ける』判断が求められる場面が多くあります。私もそう感じています。ただ、その結論に至るまでには、失敗した設計の経験が何度も必要でした。」
この指示で生成された文章の導入(After):
4つのサイトを個人で運営し始めて最初に困ったのは、どのサイトの文章も「同じ顔」になってしまうことでした。Claude に記事を書いてもらうと、導入部が判で押したように「最近〇〇を耳にする機会が増えています」で始まる——そんな経験はないでしょうか。
Before と After で、文章の「顔」がまったく変わっています。変えたのはシステムプロンプトだけで、話題も長さも指定していません。
Few-shot 例文が最も効く理由
上の改善で最も効果があったのは、Few-shot例文を直接システムプロンプトに入れることでした。
形容詞の指示より、「このトーンの文章」を2〜3文見せる方が明確に精度が上がります。これは Claude が言語のパターンを学習しているモデルであり、抽象的な指示よりも具体的な例から「このパターン」を認識する方が得意だからです。
Few-shot 例文を作るコツは3つあります:
- 実際に自分が書いた文章から引用する:過去のブログ記事、SNSの投稿、メモ。「自分の声」の最良のサンプルは自分の過去の文章です
- 例文同士でトーンを揃える:1つ目はフォーマル、2つ目はカジュアル、という混在は避ける
- 長さは3〜5文程度:長すぎると Claude が例文の「内容」に引っ張られ、「形式」の学習にならないことがある
私はこの例文を少しずつ更新しています。自分が書いた記事の中で「これは自分らしい」と感じた段落を見つけたら、そのまま例文として追加していく運用です。
4サイトでの実際の設定と差異
私が運営している4つのサイト(Claude Lab / Gemini Lab / Antigravity Lab / Rork Lab)は、それぞれ対象とする読者層が少し異なります。この違いを反映するために、共通のシステムプロンプト基盤に「サイト固有の調整」を追加しています。
共通部分(全サイト):
- 敬体統一・一人称視点・断定を避ける語尾
- Few-shot 例文(3〜4文、個人体験を含む文章)
- 禁止語句リスト(「ここでは」「を整理します」「」)
サイト固有の調整:
- Claude Lab: 「個人開発者・小規模プロジェクト向け実装者の視点」を追加。技術的な正確さより「現場で使えるか」を優先する判断軸
- Gemini Lab: 「Google エコシステムとの接続を意識した実用家の視点」を追加
- Rork Lab: 「ノーコード/ローコードで最初のアプリを作る人への共感」を前面に
共通化することで、基盤部分の改善が4サイト全体に一度に反映できるようになりました。逆に言うと、基盤のシステムプロンプトが劣化すると4サイトまとめて劣化するリスクもあるので、月に一度は基盤を見直しています。
文体の一貫性を保つためのセルフチェック
システムプロンプトを設計した後、私が生成文章を確認するときに使っているチェックポイントです。
まず「導入の最初の1文が具体的な状況か問題提起で始まっているか」を確認します。「〜について」「〜とは」で始まっていたら、文体指示がうまく効いていないサインです。
次に「一人称が自然に使われているか」。「私は〜」「私自身〜」が1〜2段落に1回程度含まれているのが目安です。全く出てこない場合は、客観的すぎる文体になっています。
最後に「まとめが本文の箇条書き再掲になっていないか」。良いまとめは「次に読者が取るべきアクション1つ」だけです。「ポイントを整理すると①②③」で終わっていたら書き直します。
これらは Claude に直接「この文章をこのチェックリストで評価してください」と聞くことで、ある程度自動化できます。システムプロンプトと同じチェックリストを持たせておくと、生成→評価→改善のループを Claude 内で完結させやすくなります。
全体を振り返って——今日から試せる手順
最初のステップとして、自分が過去に書いた文章の中で「これは自分らしい」と感じる段落を1〜2つ選んでみてください。ブログ、SNS、メモ、メールでも構いません。
その文章をシステムプロンプトの末尾に「以下は私の文体の例です。このトーンで書いてください:」と添えて渡してみると、今日から文体の変化を体感できるはずです。
「丁寧に」という言葉一つより、あなた自身の声を1パラグラフ見せる方が、Claude には確実に伝わります。
実装の参考になれば幸いです。