月初の夜、請求の台帳を開いたまま、Excel のサイドパネルから Claude を呼べることに気づきました。
台帳には、取引先の名前、請求額、連絡用のメールアドレスが一行ずつ並んでいます。「この表を、そのまま見せてよいのだろうか」。マウスに手を置いたまま、しばらく動けませんでした。
使い方の説明を読む前に、先に決めておいたほうがよいことがあるのだと思います。ここでは、公式ドキュメントの注意書きを読み直し、私の台帳に当てはめて引いた線を、そのままお伝えします。Excel を触れる方であれば、ターミナルを開く必要はありません。
先に、公式が書いている「できないこと」を確かめます
Claude for Excel は、Excel にアドインとして入り、開いているブックについて質問したり、数式の関係を保ったまま値を変えたり、エラーの原因を辿ったりできます。回答にはセルへの参照が付き、クリックすればその場所へ飛べます。Pro、Max、Team、Enterprise のプランが対象です。
一方で、読み飛ばしたくないのは「向かない使い方」の節でした。公式の記述を、私なりに三つに畳みます。
- 人の確認を通さない最終納品物、検算なしの監査に関わる計算、機密性の高い・規制のあるデータを管理なしで扱う使い方は勧められていません
- マクロと VBA、データテーブルは未対応です
- Excel 2016 と 2019(永続ライセンス版)、iPad、Android の Excel では動きません。Web 版、Microsoft 365 の Windows 版、Mac 版では動きます
もう一点、外部から届いたファイルには、Claude を操ろうとする隠れた指示が入っている可能性がある、と公式が警告しています。ダウンロードしたテンプレートや取引先のファイルが典型です。危ない操作は実行前に確認が出ますが、確認を急いで押してしまえば意味がありません。
見せる前に引いた三つの線
台帳の列を、次の表のように分けました。
| 列の種類 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 金額・日付・区分など、集計に使う列 | 読ませる | 間違えても、検算で見つけて戻せる |
| 氏名・メール・住所など、人を特定できる列 | 作業用コピーでは削除 | 質問に答えるのに要らない。要らないものは渡さない |
| 外部から届いたファイル | そのまま開かない | 隠れた指示が入っていても、自分では気づけない |
大事なのは二行目です。私の台帳で「今月、前月より増えた区分はどれか」を知りたいだけなら、取引先の名前もメールアドレスも要りません。要らない情報は、渡さなければ漏れようがないのです。
読ませるのは、間違えても戻せる列だけ。 この一文を、台帳の先頭に付箋として貼りました。
作業用コピーを作る手順
実際の手順は、次の四つです。
- 元のブックを閉じ、「名前を付けて保存」で
台帳_claude作業用.xlsxのようなコピーを作ります。以降、Claude に触らせるのはこのコピーだけです - コピーの側で、氏名・メール・住所の列を削除します(元のブックには手を付けません)
- 一行目が見出しになっていること、結合セルが無いことを確かめます。見出しが曖昧だと、Claude がどの列を指しているのか、私のほうが追えなくなります
- アドインの設定にある Instructions の欄に、毎回守ってほしい書式を書きます。公式の例にあるとおり「数値は桁区切りにする」「見出し行は太字にする」程度で十分です。Instructions は Excel 側にだけ効き、PowerPoint や Word とは別になっています
私は、元のブックを閉じてからコピーを開く順番にしています。同じ名前のブックを二つ並べて開くと、どちらに指示が反映されたのか、一瞬わからなくなるからです。
最初の頼み方は、「読むだけ」にします
最初の一回は、値を変えさせません。読ませて、答えを確かめるだけにします。
❌ 「この台帳をきれいに整えてください」
✅ 「E 列の合計と、C 列の合計が合っていません。差が出ている行を探して、セルの場所を付けて教えてください。値は変えないでください」
公式のベストプラクティスにも、「何を変えたいかを具体的に」とあります。前者は範囲が決まっておらず、どこまで書き換えられるのかが読めません。後者は、探すだけで、変更は一つもありません。
答えが返ってきたら、示されたセルを自分の目で開きます。引用のリンクを押せば、その場所へ移動できます。この「自分の目で一度開く」を省くと、読ませた意味が半分になってしまうのです。
変更を任せるのは、その次の回からです。公式は上書きの前に警告を出すと書いていますが、私は警告に頼らず、毎回コピーを一つ多く取るようにしています。
検算は、Claude の外に一式だけ残します
Claude の答えが正しいかどうかは、Claude に尋ねても確かめられません。私は、表の外に検算用のセルを一つだけ置いています。
' 作業用コピーの空きセルに置く検算式(元のブックには置かない)
' C 列は請求額、E 列は入金額。差がゼロなら 0 を返す
=SUM(C2:C200)-SUM(E2:E200)
Claude に値を変えさせたあと、この式の結果が想定どおりかを見ます。想定と違えば、コピーを閉じて、保存せずに捨てます。元のブックは、最初から触っていないのですから、戻す作業そのものが要りません。
何をしたら戻せるかを先に決めておくと、Claude に頼む範囲を、少しずつ広げる気持ちになれました。
今日の確認は、個人情報の列を数えるだけでした
最初の一歩は、開いているブックにある「人を特定できる列」を数えることでした。ゼロなら、そのまま試して構いません。一つでもあれば、コピーを作って、その列を消してから始めます。
私はこの順番で、はじめて Claude に台帳の一部を見せました。広げていくのは、検算式が一度も裏切らなかったと確かめてからにするつもりです。外部から届いたファイルを開くときの考え方は、Claude in Chrome の許可モードで線を引いた記事にも通じるところがあります。