長らく App Store Connect の Sales and Trends は、月末に一度だけ眺めて済ませていました。広告収益のほうが日々の変動が大きいので、AdMob のダッシュボードに気を取られてしまって、有料アプリの売上と App 内課金の小さな波は、結局あとから振り返るだけになっていたのです。
2014 年から個人でアプリを作り続けてきて、累計 5,000 万ダウンロードを超えた今でも、こうした「月次で十分」と決めつけていた指標が実はもう少し細かく読めることに、最近になってようやく気づきました。週次でちゃんとレビューする運用を、Claude in Chrome に伴走してもらいながら 1 ヶ月続けてみたので、4 アプリ分の数字を交えてその所感を残しておきます。
始めた背景
きっかけは、3 月に AppLovin MAX のメディエーションを導入してから AdMob 側のダッシュボードを毎朝確認するようになり、それと同じ流量で App Store Connect の指標も見直しておきたくなったことです。広告収益の変動だけ追いかけていると、有料アプリのリピート購入や App 内課金の細かい増減が見えにくくなる感覚がずっとあって、これを放置するのは個人開発者として勿体ないと感じていました。
対象は Beautiful HD Wallpapers、浮世絵壁紙アプリ、Relaxing Healing、Law of Attraction Everyday の 4 本です。広告収益が主力なので App 内課金の絶対額は大きくないのですが、それでも国別の入り方には季節やキャンペーンの跡がはっきり残っていて、月次でまとめてしまうと見落としてしまう動きが多いと感じていました。
最初の週は手動で App Store Connect にログインしてレポートをダウンロードしようとして、そこで気持ちが折れました。日本・米国・中国・ドイツ・ブラジルだけ見るにしても、アプリ × 国 × 製品コード × 週で 80 行を超えるうえに、UI の切り替えが地味に多くて、私の集中力では一度に最後まで読みきれなかったのです。
Claude in Chrome に頼んでいる定型ルート
そこからは、Claude in Chrome に「ダッシュボードを順番に見て、必要な数字だけテキストで戻してほしい」と頼む方向に切り替えました。私が朝の散歩から戻ってくる頃には、4 アプリ分のレポートが Markdown で並んでいる、というのが今の運用です。
実際に渡している指示の輪郭は、毎週ほぼ同じです。
1. App Store Connect の Sales and Trends を開く
2. 直近の暦週(月曜〜日曜)にフィルターを合わせる
3. 4 アプリそれぞれについて、日本・米国・中国・ドイツ・ブラジルの
- Units(販売数)
- Proceeds(USD ベースの正味売上)
- Refunds(払い戻し件数 / 金額)
を抜き出す
4. App 内課金(Subscription / Consumable)と買い切りを分けて、
先週との差分を ± 表記でまとめる
5. 例外値(前週比 ±30% 超)は理由欄に空白で残す
ここで意識しているのは、判断を含まない、抜き出しと差分だけを頼むことです。「どうしてこの国で増えたか」を Claude in Chrome に推測させても、外れた仮説が混ざるとあとで自分が二度手間を踏むだけだと、3 週目くらいで学びました。理由欄を空白で残しておくと、私が散歩から戻ってきたあと、コーヒーを淹れながら一人で考える時間が確保できます。
1 ヶ月で見えた数字の癖
4 週間続けてみると、月次で読んでいたときには気づかなかった癖がいくつか見えてきました。
ひとつ目は、Relaxing Healing の App 内課金が金曜の夜に集中していることです。月次でまとめてしまうと「平均的に売れている」ように見えていたのですが、週次の Units 推移を並べると、金曜〜土曜が他の曜日の 2.4 倍くらいになっていました。睡眠用アプリらしい、週末の前夜に試したくなる動機が透けて見えるようで、これだけでも分けて見る価値があったと感じています。
ふたつ目は、浮世絵壁紙アプリの米国 Proceeds が、月の前半に偏ること。月末で集計すると見えなくなる動きですが、週次で見ると 1〜2 週目に上振れ、3〜4 週目で落ち着くパターンが 2 ヶ月分はっきりと残っていました。月初に給与日が入る人が買っているのか、それとも私の言語圏外でなにかの周期と噛み合っているのか、確証はまだ持てていません。理由欄を空白で残しておく価値はここでも効いていて、慌てて結論を書かずに済んでいます。
みっつ目は、Refunds の傾向です。週 1〜2 件の少ない母数なのですが、ブラジルで集中する週があり、その週は決まって新しいバージョンを出した直後でした。私のリリースタイミングが Refunds の小さな波を作っているのは、月次ではまったく見えていなかった事実です。リリース後 48 時間は通知バナーの文言を控えめにする、というローカルな調整を試し始めました。
やってよかったこと・やらなくなったこと
やってよかったことは、ふたつあります。ひとつは、AdMob ダッシュボードと Sales and Trends を「同じ朝のルート」に並べたこと。広告収益と App 内課金は別の心の使い方になるので、行ったり来たりはしんどいだろうと思っていたのですが、Claude in Chrome が抜き出してくれる Markdown が同じ書式に揃っていると、頭の切り替えコストはほぼゼロでした。
もうひとつは、判断の入っていない数字だけを受け取るという線を最初から引いておいたこと。代理店時代の癖で、私はつい「なぜ伸びたか」を先回りして書いてしまうのですが、Claude in Chrome に同じ癖を持たせると、外れた仮説の修正に時間を取られて疲れます。理由欄を空白にする、はささやかな運用上の発明でした。
やらなくなったのは、月末の駆け込みレビューです。週次で見ているので、月末に通帳を眺めるような気持ちで Sales and Trends を開くことがなくなりました。代わりに「先週なにが起きたか」を見ている感覚が定着して、月次の集計は四半期の流れを掴むための背景に下がりました。
次の月に試したいこと
来月は、リリースタイミングと Refunds の関係をもう少しきちんと見る予定です。具体的には、各アプリの直近 12 リリースについて、リリース日からの 7 日 / 14 日 / 30 日 Refunds 率を出して、私のリリース習慣のうちなにが悪さをしているのかを切り分けてみるつもりです。Claude in Chrome には「リリース後 7 日の Refunds 行だけ抜き出す」というシンプルな仕事だけ任せて、判断は私が引き受けます。
それから、今は日本・米国・中国・ドイツ・ブラジルの 5 ヶ国に絞っていますが、Units が小さくても CV 率が高いインドネシアとフィリピンを次の月に足してみたいと考えています。広告系のチューニングをしている AppLovin MAX 側でも東南アジアの動きが気になり始めていて、Sales and Trends とどう繋がるか確かめたいからです。
1997 年、16 歳でインターネットに触れた頃から、私は新しい指標との出会いがいつも嬉しい人間でした。Sales and Trends は古くからある画面ですが、自分の読み方を変えただけで、これだけ違う景色になるのだと改めて知りました。月次で済ませていた数字を、もう一段細かく読み直す。地味な題材かもしれませんが、個人開発の足腰を作る作業として、私は今これがいちばん好きです。
お読みいただきありがとうございました。同じように Sales and Trends を月次で済ませている方が、週次に切り替えるきっかけになれば嬉しいです。