「プロジェクトに置いた PDF が、今日になったら参照されなくなった」——Claude Projects を業務で使っていると、こうした不可解な挙動に出会うことが意外と多いものです。エラーメッセージも出ず、Claude が淡々と「該当する内容は見当たりません」と返してくる。これが一番厄介です。
この記事は、私自身が Claude Projects を毎日のように使う中で遭遇した症状を、原因の系統別に整理し直したものです。「Claude が悪い」のか「ファイル形式が悪い」のか「単に同期が遅い」のか——切り分けの判断軸を持つだけで、復旧までの時間は劇的に短くなります。
まず疑うべきは「ファイルそのもの」ではなく「インデックス更新」
Claude Projects のナレッジは、アップロードした瞬間に使えるわけではありません。内部的にチャンク化(文書をベクトル検索可能な単位に分割)→ 埋め込み生成 → インデックス反映、という段階を踏みます。
私の体感では、テキスト主体の PDF(30 ページ以下)であれば数十秒で反映されますが、画像が多く含まれる資料や 100 ページを超えるドキュメントでは、5 〜 10 分かかることもあります。
症状: アップロード直後に質問しても「該当なし」と返ってくる → まず 5 分待ってから、新しい会話を立ち上げて再度質問してみてください。同じ会話の中では、最初に「該当なし」と判定されたコンテキストを引きずる傾向があります。
症状: 数時間経っても認識されない → ファイルそのものに問題がある可能性が高いです。次のセクションへ進みます。
ファイル側の原因を切り分ける 4 つのチェック
1. スキャン PDF(画像 PDF)かどうか
最も多い原因がこれです。Word から書き出した PDF はテキストレイヤーを持ちますが、紙の書類をスキャンした PDF は「画像」として扱われます。Claude Projects のナレッジ検索は OCR を経由しないため、スキャン PDF はそもそも検索対象になりません。
確認方法は単純で、PDF を開いて文字を選択できるかどうかです。選択できなければスキャン PDF です。Acrobat や macOS の「プレビュー」アプリで OCR をかけて、テキストを埋め込んだ版を作り直してください。
2. ファイルサイズが上限に近い
Claude Projects の 1 ファイルあたりの上限は 30 MB ですが、20 MB を超えるファイルは処理失敗が増えます。上限ギリギリのファイルがある場合は、章ごとに分割してアップロードし直す方が確実です。
3. 暗号化・パスワード保護
「印刷不可」「コピー不可」のセキュリティが付いた PDF は、テキスト抽出が阻害されることがあります。一度パスワードを解除してアップロードし直すと改善するケースがあります。
4. 文字コードの乱れ
これは見落としやすい点です。Mac で作った日本語 docx を Windows で編集して再保存した、というファイルでは文字化けが Claude 側のテキスト抽出時に発生します。一度プレーンテキスト(.txt, UTF-8)にコピーして貼り直すと、症状が消えることがあります。
「ファイルが消える」「数が合わない」場合
これも体験者の多い症状です。「昨日 8 個アップロードしたのに、今日見たら 6 個しかない」というケース。原因は次のいずれかであることがほとんどです。
原因 A: プロジェクトのストレージ上限超過
無料プランや Pro プランには、プロジェクト全体のナレッジ容量に上限があります。上限を超えると、新しいファイルのアップロードは成功するように見えても、古いファイルが内部的に「優先度が低い」と判定されて検索対象から外れることがあります。
対処法: 古いファイルや、すでに別の形でまとめ直した素材を削除して容量に余裕を作ってください。
原因 B: 別アカウント・別ワークスペースでログインしていた
社用と個人用、あるいは Pro 契約と Free アカウントを併用している方に多い症状です。ブラウザのキャッシュやセッション切れで、知らないうちに別アカウントに切り替わっているケースを何度も見てきました。
対処法: アカウント名を確認してから、該当するワークスペースに入り直してください。
原因 C: プロジェクトが「アーカイブ」されている
明示的にアーカイブした覚えがなくても、長期間アクセスしていないプロジェクトは一覧から外れることがあります。プロジェクト一覧の「アーカイブ済み」フィルタを確認してみてください。
ナレッジは認識されているのに「使ってくれない」場合
ファイルはアップロード済み、検索もされているはずなのに、Claude が回答にナレッジを反映してくれない——これは別の問題です。
Claude Projects には「カスタム指示(System Prompt)」がプロジェクト単位で設定できます。この指示が「常に簡潔に答えてください」「外部知識を優先してください」のように書かれていると、ナレッジの参照が後回しになることがあります。
私が業務用に使っているプロジェクトでは、カスタム指示の冒頭に必ず次の一文を入れています。
回答する前に、必ずプロジェクトナレッジ内のドキュメントを検索してください。
ナレッジに該当する記述がある場合、そちらを最優先して引用してください。
これを入れるだけで、ナレッジへの参照率が体感で 3 倍以上変わります。Claude は明示的に指示しないと、内部知識(学習済みの知識)と外部知識(ナレッジ)の優先順位を保守的に判断する傾向があります。
それでも直らない時の最終手段
ここまで試しても改善しない場合、以下の順で対処してください。
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新規プロジェクトを作って、ナレッジだけ移行する — プロジェクトの内部状態が壊れていることが、稀にあります。新しい器に移すと一気に解決することがあります。
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会話履歴ではなく、新規会話で試す — 長く続いた会話はコンテキスト窓を圧迫しており、ナレッジ検索の精度が下がります。
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ブラウザを変えて検証する — Chrome 拡張機能(特に広告ブロッカー)が Claude のファイルアップロード API と競合するケースが報告されています。シークレットモードか別ブラウザで再現するかを確認してみてください。
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サポートに連絡する前に、再現手順をメモする — どのファイル、どんな質問、何時に試したか、を記録しておくと Anthropic 側の調査が早く進みます。
次のアクション
まずは「ファイル側の原因 4 チェック」を上から順に試してみてください。私の経験では、9 割の症状はスキャン PDF か文字コードの問題で説明がつきます。ナレッジが反映されない場合は、カスタム指示に「必ず先に検索する」の一文を追加するだけで、別物のように使いやすくなります。