取り組みの背景
プロジェクト設定ファイルの標準化は、AI駆動開発の効率性を大きく左右します。特に AGENTS.md と CLAUDE.md の登場により、AIツールがプロジェクトの意図を正確に理解できるようになりました。
ここでこれら2つのフォーマットの違い、それぞれの書き方、そして複数AIツールとの共存パターンを実践的に解説します。
AGENTS.md とは―事実上の標準フォーマット
背景:Linux Foundation傘下での正式採択
2025年、Agentic AI Foundation(AAIF)は AGENTS.md をエコシステム標準として正式採択しました。現在、GitHub全体で 60,000以上のリポジトリ がこのフォーマットを採用しており、単なる「提案」ではなく「事実上の標準」となっています。
AGENTS.md の目的
AGENTS.md は、AIエージェントが自動でプロジェクトを理解し、正しく動作できるようにするためのメタデータ層 です。人間が書いたREADMEとは異なり、AIが機械的に解析し、実行可能な指示として活用することを想定しています。
対応ツール(2026年3月時点)
| ツール | AGENTS.md対応 | CLAUDE.md対応 | 優先順序 | |---|---|---|---| | Claude Code | ✓ Fallback | ✓ Primary | CLAUDE.md優先 | | Codex CLI | ✓ Full | ✓ なし | ディレクトリ階層走査 | | Cursor | ✓ Root only | ✓ なし | ルートのみ | | GitHub Copilot | ✗ 未実装 | ✗ 未実装 | プロンプトから推測 | | Gemini CLI | ✓ Full | ✓ なし | 両方対応 |
CLAUDE.md とは―Claude Code専用の最適化フォーマット
設計思想
CLAUDE.md は Claude Code(Anthropic公式CLI) のために最適化された設定ファイルです。AGENTS.mdよりも以下の点で異なります:
- Claude特有の機能 に焦点(Cowork連携、記憶機能など)
- より詳細なコンテキスト情報 をサポート
- 複数ファイル同時編集 時のルール定義
- 段階的実行(Step 0〜8) などの詳細フロー指定
構成例
---
# プロジェクト概要
## 技術スタック
## 最重要ルール
### 1. [ルール1]
### 2. [ルール2]
...
## 記事作成の完全ワークフローCLAUDE.md は 構造化セクション で、人間にも読みやすく、Claude Codeが解析しやすい形式になっています。
AGENTS.md と CLAUDE.md の違い
1. フォーマット構造
| 項目 | AGENTS.md | CLAUDE.md | |---|---|---| | 基本形式 | YAML + Markdown | 見出し + Markdown | | マシン可読性 | YAML パーサー前提 | テキスト行走査 + セクション抽出 | | 人間可読性 | 中程度(YAML 文法がある) | 高い(純粋なMarkdown) | | 拡張可能性 | YAMLスキーマで厳密 | セクション追加で自由 |
2. カバレッジ
AGENTS.md が得意な領域:
- 環境セットアップ(依存関係、バージョン指定)
- テスト・ビルド・デプロイコマンド
- ファイル構成の説明
- 禁止項目(触らないファイル、変更禁止ロジック)
CLAUDE.md が得意な領域:
- 段階的ワークフロー(Step 0 → Step 8)
- Claude Code特有の機能(スケジュールタスク、Cowork連携)
- プロジェクト運用マニュアル
- トラブルシューティング辞典
3. 実行順序
AI ツール起動
↓
CLAUDE.md を検索(Claude Code の場合)
↓ [見つからない場合]
AGENTS.md を検索(フォールバック)
↓ [見つからない場合]
ディレクトリ階層走査(Codex CLI)
↓ [見つからない場合]
プロンプト履歴から推測(GitHub Copilot など)効果的な書き方
AGENTS.md の書き方(実践例)
# agents.md
---
agents:
- name: "Frontend Developer"
role: "React/TypeScript開発"
constraints:
- "src/components/* のみ編集可能"
- "API呼び出しは src/services/* に集約"
- "スタイルは Tailwind CSS のみ使用"
verification:
- "npm test が全て pass"
- "npm run lint がエラーゼロ"
- "型チェック: tsc --noEmit"
- name: "Backend Developer"
role: "Node.js API開発"
constraints:
- "src/api/* のみ編集可能"
- "データベーススキーマ変更は禁止"
verification:
- "npm run test:api"
- "curl http://localhost:3001/health"
technology_stack:
- "React 19 + TypeScript 5"
- "Node.js 20 + Express"
- "PostgreSQL 15"
- "Docker Compose"
build:
frontend: "npm run build:web"
backend: "npm run build:api"
test: "npm test"
deploy: "docker-compose up -d"
prohibitions:
- "node_modules を直接編集"
- "package.json の勝手な変更"
- ".env.local を Git コミット"
- "マイグレーションの巻き戻し"
---CLAUDE.md の書き方(実践例)
# MyProject — CLAUDE.md
このファイルは MyProject の Claude Code 用設定ファイルです。
## 最重要ルール
### 1. 常に TypeScript を使用する
デフォルトで JavaScript は禁止。例外: モノリシック設定ファイル(webpack.config.js等)のみ。
### 2. テストファイルは src/tests/ に集約
- ❌ src/components/Button.test.tsx
- ✓ src/tests/Button.test.tsx
### 3. スタイル定義は CSS Modules のみ
Tailwind CSS の直接記述は禁止。理由: scoped styling により名前衝突を防止。
## Step 0〜8 ワークフロー
### Step 0: 環境準備
```bash
git clone [github.com](https://github.com/user/myproject.git)
cd myproject
npm install --prefer-offlineStep 1: 型チェック
tsc --noEmitStep 2: テスト実行
npm test -- --coverageStep 3: コード作成
...
Step 4: Lint + Format
npm run lint:fix...
よくあるミス&対処法
ミス1: CSS-in-JS ライブラリの混用
❌ styled-components と CSS Modules の混用 ✓ CSS Modules のみ使用
ミス2: 外部ライブラリの過度な追加
❌ npm install lodash moment 等の大型ユーティリティ ✓ 既存の依存関係の中で実装
...
---
## ベストプラクティス
### パターン1: 小~中規模プロジェクト(< 10万LoC)
✓ AGENTS.md を作成(60,000リポジトリの標準に準拠) ✓ CLAUDE.md は不要
**利点:**
- Codex CLI、Cursor、Gemini CLI などマルチAIツール対応
- 標準フォーマットのため、新しいメンバーも容易に理解
- ツール更新で自動対応される可能性が高い
### パターン2: Claude Code 中心の大規模プロジェクト
✓ CLAUDE.md を作成(詳細なワークフロー) ✓ AGENTS.md も併置(フォールバック用)
**構成例:**
project/ ├── CLAUDE.md ← Claude Code の詳細設定 ├── agents.md ← 他ツール用(AGENTS.md) ├── README.md ← 人間向けドキュメント ├── src/ ├── tests/ └── docs/
### パターン3: 複数AIツール + 複数チームメンバー
✓ AGENTS.md を基本とし、複数ロール定義 ✓ CLAUDE.md で Claude Code 固有のワークフロー ✓ .cursorrules / .copilot-instructions も併用
**効果:**
- GitHub Copilot(.copilot-instructions)
- Cursor(.cursorrules)
- Claude Code(CLAUDE.md)
- Codex CLI(AGENTS.md)
が各自のフォーマットで指示を受け取れる
---
## 重要なセクション構成
AGENTS.md / CLAUDE.md 両方で **必ず含めるべき5つのセクション:**
### 1. プロジェクト概要 / 技術スタック
```markdown
## プロジェクト概要
- 目的:
- 対象ユーザー:
- コアアーキテクチャ:
## 技術スタック
- フロントエンド: React 19 + TypeScript
- バックエンド: Node.js 20 + Express
- データベース: PostgreSQL 15
- インフラ: Docker Compose + GitHub Actions
2. ビルド・テスト・実行コマンド
## コマンドリファレンス
```bash
npm install # 依存関係のインストール
npm run dev # ローカル開発サーバー起動
npm test # 全テスト実行
npm run build # 本番ビルド
npm run lint:fix # Lint + 自動修正
### 3. コーディング規約 / 設計方針
```markdown
## コーディング規約
- TypeScript 厳密モード(strict: true)
- 命名規則: camelCase(変数・関数)、PascalCase(型・コンポーネント)
- ファイルサイズ上限: 300行(超過時は分割)
4. テスト指示
## テスト指示
- カバレッジ: 80% 以上必須
- テストフレームワーク: Vitest
- E2E: Playwright(src/tests/e2e/)5. 禁止事項(Prohibitions)
## 禁止事項(AIが絶対に行わない)
- node_modules 内のファイル直接編集
- .env ファイルのコミット
- データベーススキーマの自動作成
- 依存関係のメジャーバージョン更新(事前承認なし)実践例:段階的な追加方法
初期版(最小限):
5〜10個の最重要ルール を書く
成長段階(運用開始後):
よくあるエラー / ミスパターンを追加
→ 各エラーの対処法を記載
成熟段階(6ヶ月以降):
複数ロール定義(Frontend / Backend / QA)
ステップ・バイ・ステップのワークフロー
詳細なトラブルシューティング辞典(30〜50項目)
まとめ
| 項目 | AGENTS.md | CLAUDE.md | |---|---|---| | 採用すべき場面 | マルチAIツール / 標準化重視 | Claude Code 中心 / 詳細ワークフロー | | 対応ツール数 | 4+ | 1(ただし最適化) | | 学習コスト | 中程度 | 低い | | 導入難度 | 低い(YAMLテンプレートあり) | 中程度(独自セクション多数) | | 60,000リポジトリの採用実績 | ✓ 採用 | ✗ Claude Lab専用 |
最終的な推奨:
新規プロジェクト → AGENTS.md から開始
既存プロジェクト → AGENTS.md を後付け + CLAUDE.md で詳細化
Claude Code 専用 → CLAUDE.md + AGENTS.md フォールバック
これにより、AIツールの進化に対応でき、かつ人間にも読みやすいドキュメントを維持できます。
関連リソース
- AGENTS.md 公式仕様
- Claude Code 公式ガイド
- Claude Code 設定ファイル完全ガイド
- MCP サーバー構築ガイド