Cowork を初めて開いた日のことです。「フォルダを選択してください」という画面で、私の手はしばらく止まっておりました。普段使っている作業フォルダをそのまま選べば、話は早いのです。ただ、その中には書きかけの原稿も、取引先とのやり取りも、どこで何を使っているのか自分でも把握しきれていない設定ファイルも入っていました。
結論を先にお伝えします。最初の一週間は、失っても困らないフォルダだけを渡します。 この一文を決めてから、Cowork との付き合いがずっと落ち着きました。以下では、私が実際に順番を付けて渡した3つと、最後まで渡さなかった1つを書き残します。
先に知っておきたい、Cowork が触れる範囲
公式ヘルプによると、Cowork が読み書きできるのは、皆さまが接続したフォルダの中だけです。そして、ファイルを完全に削除するときは、毎回こちらの明示的な許可が求められます。
この二つは、安心材料であると同時に、線引きの根拠にもなります。接続したフォルダの中身は、Cowork から見えるのです。許可さえ出せば、書き換えも消去もできます。ということは、「どのフォルダを接続するか」が、最初で最大の安全装置なのです。
動かす前にもう一点。確認の厳しさは Manual、Auto、Skip の三つのモードで変わります。最初の一週間は、Manual か Auto にしておくのが無難だと私は考えています。Skip は、中身を完全に把握しているフォルダでだけ使うものです。
1つ目: 空の練習用フォルダ
最初に渡したのは、中身が空のフォルダでした。名前は「cowork-practice」。ここで確かめるのは、仕事の成果ではありません。次の三点だけです。
- 頼んだものが、どのフォルダに、どんな名前で出てくるのか
- 途中で許可を求められる場面が、どのくらいの頻度か
- 削除の許可画面が、実際にどう見えるのか
macOS のターミナルが使える方は、次のように作ると手早く済みます。ターミナルが苦手でしたら、Finder で新規フォルダを作るだけでも同じです。
# 何を解決するか: 本番の資料に触れさせずに、Cowork の動きだけを確かめる
mkdir -p ~/cowork-practice
echo "テスト用のメモです。消えても困りません。" > ~/cowork-practice/memo.txt
ls -la ~/cowork-practice # 渡す前に、中身が想定どおりか目で確認する最後の ls は、小さな習慣です。渡す前に中身を自分の目で一覧しておくと、「そんなファイルが入っていたのか」という後悔を防げます。「渡す前に一覧する」は、この先ずっと使える手順です。
2つ目: 資料の「コピー」を入れたフォルダ
練習用に慣れたら、次は実際の資料を渡します。ただし原本ではなく、コピーをです。
たとえば、領収書の画像が散らばった「ダウンロード」の一部や、整理したい写真の束です。コピー先は先ほどの練習用フォルダの中に作ります。
# 何を解決するか: 原本を守ったまま、整理や転記の依頼を試す
cp -R ~/Documents/receipts-2026-10 ~/cowork-practice/receipts-copy
# なぜコピーか: 仕分けや名前の変更は、結果を取り消すより、最初から原本に触れさせない方が確実だから私自身、個人開発のアプリ運用で、スクリーンショットや集計用の表が増えるたびにフォルダを整理してまいりました。整理の依頼は、Cowork がもっとも力を発揮する場面のひとつです。だからこそ、最初はコピーで試します。出来上がりが気に入らなければ、フォルダごと捨てて、頼み方を変えてやり直せばよいのです。
3つ目: 仕上がりの置き場
三つ目は、完成した成果物を受け取るための、専用フォルダです。名前は「cowork-output」としました。
作業用と成果物の置き場を分けておくと、「Cowork が作ったもの」と「自分の資料」が混ざらなくなります。 成果物だけを見直し、良ければ原本の場所へ自分で移しています。この最後の一手を人間が握っておくと、Cowork に任せる範囲が広がっても、不安が増えません。
渡さなかった1つ: 認証情報の置き場
最後まで渡さなかったのは、パスワードの控え、API キー、各サービスの認証情報を置いているフォルダです。
理由は単純です。接続したフォルダの中身は、Cowork から読めるからです。AI を使うこと自体を疑っているのではありません。人が見ても同じ判断をする、というだけの話です。たとえば、鍵の束を預けた相手に「家の掃除をお願いします」と頼む人はいないでしょう。読めるということは、作業の流れの中で、その内容が画面や記録に現れる余地が生まれます。便利さと引き換えにする価値は、私にはありませんでした。
| フォルダ | 渡す時期 | 中身 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 練習用(空) | 初日 | テスト用のメモのみ | 出力先・許可の頻度・削除の画面 |
| 資料のコピー | 数日後 | 原本の複製 | 整理や転記の仕上がり |
| 成果物の置き場 | 同時期 | 空から始める | 作ったものと自分の資料が混ざらないか |
| 認証情報の置き場 | 渡さない | パスワード・キー類 | —— |
つまずいたとき、先に見る場所
公式のトラブルシューティングには、「ファイルが想定の場所に出てこない」という項目があります。見るべきは二点で、ファイルへのアクセス許可を渡しているか、そして Cowork が示した出力先がどこか、です。
成果物を探して、見当違いのフォルダを開き続けてしまう日は誰にでもあります。出力先を一度言葉にして確認する——それだけで解決する場面は、思いのほか多いのです。
週の終わりに見直す3つのこと
一週間が過ぎたら、次の三点だけ振り返ってみてください。
- 練習用フォルダの中で、頼んでいないファイルが増えていないか
- 許可の画面を、中身を読まずに押している自分がいないか
- 成果物の置き場に、手を入れずにそのまま使えたものが何割あったか
二つ目が当てはまったときは、モードを Manual に戻して、一日やり直します。慣れは、最初の事故より前に来る警報のようなものだと思います。
次の一歩
今日できることは一つだけです。空のフォルダを一つ作り、それだけを Cowork に渡して、「このフォルダに、メモを一行書いて」と頼んでみてください。許可の画面がどう見えるかを一度体験しておけば、次に渡すフォルダを選ぶときの手の止まり方が、ずいぶん変わります。
私もこの順番を、これからも守っていこうと感じています。