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API & SDK/2026-07-09上級

RAG が自信たっぷりに間違え始めたとき — 検索の取りこぼしを接地率で計測する運用メモ

Claude API の RAG で、回答は流暢なのに事実がずれ始める。多くの場合、原因は検索側で答えを含む文書を取りこぼすサイレントなリコール低下です。接地率と検索ヒット率を計測し、段階的に立て直した運用メモを、動くコードと実数値付きで残します。

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サポート用の RAG に「返金の締め切りは何日ですか」と尋ねたら、Claude は淀みなく「14日以内です」と答えました。実際の規定は 30 日でした。回答は流暢で、根拠まで添えて自信たっぷりだったぶん、むしろ肝が冷えました。

モデルが壊れたわけではありません。壊れていたのは検索側で、答えを含む文書を取得できていなかった。それでも生成は止まらず、Claude は手元にある無関係な断片から、もっともらしい嘘を組み立てていたのです。

この記事は、Claude API で運用していた RAG のサイレントなリコール低下(検索の取りこぼし)を、接地率という数字で炙り出し、段階的に立て直した記録です。RAG の作り方ではなく、作った後に検索が静かに劣化し始めたときの気づき方と直し方に絞ります。既存の構築手順はClaude API のプロンプトキャッシング設計などに譲り、ここでは計測に集中します。

生成は止まらない、だから劣化が見えない

RAG の厄介さは、検索が失敗しても生成が続くことにあります。関連文書がゼロ件でも、しきい値すれすれの無関係な断片が数件あっても、Claude はそれらしい文章を返します。API はエラーを出しません。ログには 200 が並びます。

私が踏んだ劣化は、ある日突然ではなく、じわじわ進むものでした。ナレッジベースに文書を足し、チャンク分割を少し変え、埋め込みモデルを新しい版に差し替える。どれも良かれと思っての変更です。そのたびに、答えを含む文書が上位 K 件から静かに押し出されていきました。

問題は、この劣化が回答の見た目には一切現れないことです。文章はいつも通り流暢で、むしろ自信は増していく。利用者からの「なんか最近ずれてる」という曖昧な声だけが、遅れて届きます。だから、検索が答えを掴めているかどうかを、生成とは別に計測する必要がありました。

二つの数字に分けて疑う

「RAG がずれる」を一つの塊として扱うと、原因の切り分けができません。私は問題を二段階に分け、それぞれを別の数字にしました。

指標測るもの低いときの意味
検索ヒット率答えを含む文書が取得上位 K 件に入った割合検索(埋め込み・チャンク・しきい値)が壊れている
接地率回答が取得文書に実際に支持されている割合取得はできても生成が文書を無視している

検索ヒット率が低ければ、原因は検索パイプラインにあります。検索ヒット率は高いのに接地率が低ければ、原因は生成側のプロンプトや文脈の詰め方にあります。この切り分けができるだけで、闇雲な試行錯誤がなくなりました。

最初に測ったとき、検索ヒット率は 68%、接地率は 61% でした。三回に一回は、答えの載った文書すら Claude の手元に届いていない。数字を見て、ようやく問題の在り処が腹落ちしました。

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この記事で得られること
回答は流暢なのに事実がずれる「検索の取りこぼし」を、接地率(groundedness)と検索ヒット率という二つの数字で切り分ける計測の設計
Claude 自身を採点者にして、回答が実際に取得文書へ接地しているかを毎日集計する実装(動くコード付き)
リコール低下の主因(チャンク肥大・埋め込みモデル更新・しきい値ドリフト)を段階的に潰し、接地率を61%→94%へ戻すまでの手順
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