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⬡ API & SDK/2026-07-03上級

単価が40%下がっても、タスク単価は下がるとは限らない — Opus 4.8 から Sonnet 5 への移行損益をトークン消費プロファイルで測る

Sonnet 5 の導入価格は Opus 4.8 より約40%安ですが、ツール往復が増えるとタスク単価は逆転し得ます。消費ベクトルの記録・並走ハーネス・損益分岐ターン数の逆算までを動くTypeScriptと実測で示します。

Claude API124Sonnet 58コスト設計7モデル移行TypeScript24

✦ プレミアム記事

7月2日に Claude Sonnet 5 が各プランの既定モデルになり、導入価格は100万トークンあたり入力 $2・出力 $10 と発表されました。Opus 4.8($5/$25)と比べると入出力とも約40%、導入価格なら約60%安い計算です。私自身、運営しているブログ群の夜間バッチをすぐに切り替えて、翌朝の日次コスト台帳を楽しみに開きました。

ところが下がり幅は約18%。単価は6割引きなのに、です。usage ログを突き合わせて分かったのは、ツールを回すタスクでターン数が中央値5から7に増えており、その2ターンが入力トークンを想像以上に膨らませていたことでした。単価の比較表だけを見てモデル移行の損益を判断すると、この現象は最後まで見えません。

ここでは「タスク当たり実効コスト」という物差しを立てて、消費プロファイルの記録、新旧モデルの並走計測、損益分岐ターン数の逆算までを一続きの設計として組んでいきます。個人開発の少人数運用でも入れられる小さな仕掛けですが、移行判断の精度は目に見えて変わります。

タスク単価は「単価ベクトル × 消費ベクトル」で決まります

モデルの請求は、単価そのものではなく、単価と消費量の内積で決まります。

成分単価側消費側
入力$/MTok(入力)タスク完了までに送った入力トークン総量
出力$/MTok(出力)生成トークン総量
キャッシュ読取入力より大幅に安い読取単価キャッシュにヒットした入力分
リトライ—失敗して再実行した分の全成分

単価ベクトルはモデルを替えた瞬間に切り替わりますが、消費ベクトルも同時に変わります。Sonnet 5 は計画とツール利用が強化された「エージェント的」なモデルとされており、実際に使うと、同じタスクでもツールを呼ぶ回数や出力の長さが Opus 4.8 と同じにはなりません。増える系統もあれば減る系統もあります。つまり移行の損益は、単価表からは原理的に読めない、というのが出発点です。

ターン数は入力トークンを二乗で膨らませます

ツールループの各ターンでは、会話履歴全体を入力として送り直します。システムプロンプトと初期コンテキストを S、1往復ごとに増える履歴(tool_result と直前の出力)を d とすると、n ターンのタスクの入力総量はおよそ次のようになります。

入力総量 ≈ n×S + d×(0 + 1 + ... + (n-1)) = n×S + d×n(n-1)/2

第2項が n の二乗で効きます。S = 3,000、d = 1,200(tool_result 800 + 直前出力 400)、1ターンの出力 400 トークンという、私のリンク検証エージェントに近い形状で実額を並べます。

モデルと単価4ターン6ターンOpus 4.8・4ターン比
Opus 4.8($5/$25)$0.136$0.240基準 / +76%
Sonnet 5 導入価格($2/$10)$0.054$0.096-60% / -29%
Sonnet 5 標準価格($3/$15)$0.082$0.144-40% / +6%

同じ4ターンで走れば、割引率は単価どおり60%・40%です。しかし移行後にターンが2つ増えるだけで、導入価格でも節約は29%まで縮み、9月1日以降の標準価格では Opus 4.8 より6%高くなります。「40%安いモデルに替えたのに請求が増えた」は、この形状のタスクでは普通に起こる算術です。プロンプトキャッシュを併用すれば二乗の傾きは緩みますが、キャッシュはモデル単位で分離されるため移行直後はヒットが期待できません。この点はモデル切替とプロンプトキャッシュ再ウォームの設計で扱ったとおりです。

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✦「単価表では安いのに請求が下がらない」原因を、入力トークンがターン数の二乗で膨らむ算術から特定できるようになる
✦同じタスクを新旧モデルで並走させて、タスク当たり実効コストと消費プロファイルの差を数字で取るハーネスをそのまま導入できる
✦移行を許容できる増分ターン数(損益分岐)を自分の単価とタスク形状から逆算し、系統ごとに移行判断を下せるようになる
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