朝起きて最初に開くタブは、長らく Google Search Console でした。Claude Lab・Gemini Lab・Antigravity Lab・Rork Lab の 4 サイトに加え、別フォルダで運営している読み物系 2 サイトを合わせて 6 つ。プロパティを順に切り替えてはクリック数の前日比を眺める、その 15 分から 20 分が朝の最初の儀式になっていました。
2026 年 5 月の連休明けから、この巡回の一部を Claude in Chrome に任せてみています。アーティスト・クリエイターの廣川政樹です。2014 年から壁紙・癒し・引き寄せ系の iOS アプリを 1 人で運営してきた延長で、AI 関連のブログも 4 つ並走しているのですが、朝のうちに 6 サイト分の Search Console を全部丁寧に見ようとすると、その日の制作時間が確実に削られていきます。10 日続けてみて、思っていたよりも朝の手触りが変わったので、所感として残しておきます。
朝の Search Console 巡回が削っていた時間
GSC の何が時間を削っていたかというと、データそのものを眺めるよりも「どう感じるか」に揺れる時間でした。
クリック数が前日比でマイナス 30% と出ているプロパティを見つけると、もう次の作業に頭が戻りません。月曜の落ち込みなのか、Helpful Content アップデートの余波なのか、それとも単に天候要因なのか。判断するためにクエリ別の表を開き、ページ別の数字を眺め、デバイス別を見て、ようやく「いつもの月曜だ」と腑に落ちる。この一連の確認に、1 プロパティあたり 5 分前後かかっていました。6 サイト全部に同じことをすると、それだけで朝の制作時間が消えていきます。
数字が落ち着いている朝はそれでよいのですが、5 月初旬に Claude Lab のインデックスが 3,500 から 95 まで落ちた一件以降、「数字を見るとき身構える癖」が私のなかに少し残りました。手を動かす時間がいちばん集中できる朝に、その緊張で 20 分使うのはもったいありません。1997 年に 16 歳でインターネットに触れたとき、国境を越えて開発者同士が情報をやり取りしているのを覗き見ていた頃の、もっと開放的な気分で数字に向き合いたいと思ったのが、自動化を考えはじめたきっかけです。
Claude in Chrome に任せた範囲と任せなかった範囲
最初に決めたのは「判断は任せず、要約だけ任せる」という線引きでした。Search Console には「Discover」「検索パフォーマンス」「ページのインデックス登録」など複数のレポートがあり、それぞれ違う性質の数字が並んでいます。これを 6 サイト分まとめて Claude in Chrome に取りに行かせ、人間が必要な情報だけを目に届くようにしました。
任せた範囲は次の 3 つに絞っています。
- 各サイトの「過去 7 日と過去 28 日」のクリック数・表示回数・平均掲載順位を表で並べる
- 「ページのインデックス登録」レポートで、前日比で増えたエラーの種類だけを抜き出す
- 「検索結果」タブの上位クエリのうち、CTR が前週比で大きく動いたものを 5 件まで挙げる
逆に任せなかったのは「これは Helpful Content の影響か、それとも単なる変動か」のような評価の部分です。ここを AI に判断させると、根拠の弱い「○○の可能性があります」が並んだだけのメモが出来上がってしまい、結局自分でもう一度見に行く羽目になります。判断は人間がやる、観測の作業を AI に渡す。この線引きはそのまま今も維持しています。
10 日間で見えた数字
10 日続けてみて、いちばん明確に変わったのは「Search Console を見ている時間」でした。以前は 6 サイトを順に開いて 15〜20 分かけていたのが、Claude in Chrome がまとめたメモを最初に読むようになってから、平均 5 分前後で朝の確認が終わるようになっています。
具体的な変化を、自分の使用ログから拾ってみました。
- 朝の GSC 確認時間: 平均 18 分 → 平均 5.4 分
- 6 サイト全部のプロパティを実際にブラウザで開いた日: 10 日中 3 日のみ
- 自分でクエリを掘り下げに行った回数: 10 日で計 7 件(多くはなかった)
- 朝の制作スタート時刻: 平均で 25 分前倒し
数字の見方が雑になったかというと、そうは感じていません。むしろ「数字に揺れる時間」が削れた分、必要なときに腰を据えて掘り下げられるようになりました。たとえば 5 月中旬に Rork Lab の CTR が 0.26% という低い水準まで落ちていたのに気づいたのは、Claude in Chrome のメモが「CTR が前週比 -42% のクエリが 3 件」と先に教えてくれたからです。以前ならそのクエリに辿り着くまで 10 分かかっていたところを、最初の 1 分で行けるようになりました。
自動化で気づいた、人間が見るべきだった視点
自動化していると、自分が今まで何を見て、何を見ていなかったかが浮き彫りになります。
私の場合、毎朝クリック数の上下ばかり気にしていて、平均掲載順位の細かい変化を軽く見ていたことに気づきました。Claude in Chrome のメモに「掲載順位が 3 位以内から 4 位以下に落ちたクエリ」が並ぶようになって初めて、上位帯から滑り落ちた瞬間こそクリック数の落ち込みより重い情報だと納得しました。掲載順位 3 位と 4 位では CTR が大きく違うため、ここを早く察知できるかどうかは、後から取り戻すコストに直結します。
もうひとつ気づいたのは「自分が見たいレポートと、本当に必要なレポートが違う」という古典的な事実です。クリック数の表は気持ちが落ち着く(と錯覚する)ので毎朝開いていましたが、本当に必要なのは「インデックス登録」のエラー変動と、「Core Web Vitals」の悪化通知のはずでした。AI に任せると、こちらの好み抜きで両方拾ってくるので、自分の偏りが少しずつ補正されます。
両家の祖父がともに宮大工でした。長く使われる建物は、見たい場所だけを見るのではなく、見落としやすい場所にこそ時間をかけるのだと近くで聞いていた覚えがあります。Search Console の見方も同じで、AI が淡々と全部のレポートを並べてくれるおかげで、人間として身体が向きやすい場所だけを見続ける癖を、少しずつ直せるようになってきました。
これからの運用にしたいこと
10 日続けてみて、この運用は維持する価値があると感じています。同時に、まだ詰めていない論点もいくつか残っているので、向こう 1 ヶ月で試したいことを書き残しておきます。
ひとつめは、メモを 朝の 1 通だけに絞ること です。今は 6 サイト分が長めの 1 通になっていて、急いでいる朝は読み切れずに後回しにしてしまう日もあります。重要度に応じて 3 段階に切り分け、緊急レベルだけは別タイミングで通知する形に整理したいと考えています。
ふたつめは、インデックス登録レポートの差分追跡 です。「クロール済み — インデックス未登録」が日単位でどう動いているかを記録しておくと、Helpful Content アップデートの影響を後から振り返るときに大きな助けになります。これは自分の手で SQLite に書き出すべきか、Claude in Chrome に毎朝の差分だけテキストで残してもらうべきか、迷い中です。
みっつめは、これは少し先の話ですが、Search Console と Crashlytics の同時並走 です。先日書いた Crashlytics 週次レビューの記事と同じく、朝の AI 巡回をひとつの流れにまとめてしまえば、開発と運営の両方の状態を 5 分で把握できる体制になります。1 人で 6 サイトと 4 アプリを並走させているなかでは、この圧縮はかなり効きそうです。
最後にひとつだけ。AI に観測を任せても、心配は完全には消えませんでした。それは多分これからも変わらないのですが、少なくとも朝のいちばん集中できる時間を、数字に縛られて削るのではなく、制作と運用そのものに向けられるようになってきました。同じように複数サイトを 1 人で回している方の参考になれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。